資本政策は投資家向けの表ではありません。採用できる人材の幅、創業者が取り続けられる責任、既存投資家との対話、M&AやIPOの選択肢までを決める経営の設計図です。調達が近づいた時だけExcelを開くのではなく、日常の変化を一次資料とつなげて管理する必要があります。
年次レビューで、cap tableの前に確認すること
cap tableの分母を、毎回同じ言葉で使う
持分比率を話すとき、発行済株式だけを分母にするのか、SO・転換証券を含むfully dilutedを使うのか、未付与プールも含めるのかを最初に固定します。創業者が80万株、投資家が20万株、SOが20万株、転換証券が5万株相当なら、発行済み基準の80%と完全希薄化基準の64%は同じ意味ではありません。数字の高低より、どの基準で意思決定しているかを揃えることが重要です。
会社の「評価額」と普通株式の価値を混同しない
投資ラウンドの評価額は優先株式への投資価格と結びつくことが多く、優先株には残余財産分配優先権、転換、取得、議決権などが付く場合があります。5億円の優先株に1倍の優先権があれば、会社が4億円で売却される局面と十分高いExitでは、普通株主と投資家の受取額が大きく異なります。SOの行使価額、セカンダリー、創業者間譲渡では、誰のどの権利を前提にした価値かを明記します。
次のラウンドは、好調ケースだけで設計しない
シミュレーションには、計画どおりに伸びるベースケース、資金調達が遅れるケース、評価額が前回を下回るケースを置きます。調達額、新株数、SOプール、転換証券、アンチダイリューションを同じ表で確認します。悪い未来を予言するためではなく、下振れ時にどの権利が発動し、誰の同意が必要で、どこまで事業を続けられるかを平時に知るためです。
投資家との関係は、権利一覧ではなく運用で決まる
事前承諾、情報提供、プロラタ、取締役指名権は、契約書にあるだけでは会社を支えません。誰に、どの資料を、何日前までに送るか。予算内の採用や投資を個別同意の例外にするか。回答期限や緊急時の扱いはどうするか。契約の意図を日常の業務フローへ翻訳して初めて、ガバナンスと速度を両立できます。
Exitは、株式を売る直前に始まるものではない
IPOでもM&Aでも、買い手や市場は直近の数字だけを見ません。株主、優先権、SO履歴、知的財産の帰属、機関決議、主要契約を見ます。データルームには定款、株主名簿、cap table、投資契約、各ラウンドの決議・払込記録、SOの決議・付与・行使記録を日付順に置きます。cap tableを正本ではなく一次資料への索引として扱うことが、次のDDの速度を決めます。
取締役会で確認する五つの質問
- 01持分比率は、どの分母で示しているか。
- 02SOの未付与残は、採用計画に対して足りるか。
- 03転換証券や優先権の満期・同意要件は把握できているか。
- 04下振れラウンド時の資金と希薄化は試算済みか。
- 05株式移動・SO付与・契約改定の根拠資料を復元できるか。
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